多色木版画「いろこの宮の侍女」

2年前から国展出品に向けて「古事記」に題材を得て「木花之佐久夜」「石長比賣(秋季展)「天宇受賣」を制作してきましたが、今年の第95回国展には、山幸彦が兄に借りてなくした釣り鈎を探して、「ワダツミのいろこの宮」の門の前で豊玉比賣の侍女に出会う場面を題材にしました。青木繁の有名な油絵がありますが侍女を中心に表現したいので、今までの自分の作風を意識してエスキースから下絵そして版下を制作しました。日本古典文学大系の「古事記祝詞」や三浦佑之の口語訳本の神代編を読んで、自分独自の解釈を元に場面設定をしました。昨年はコロナ禍で国展は中止になり、今年も3回目の緊急事態宣言の期間中ですので多くの人に観て頂けないかもしれないかもと危惧しております。(第95回国展 4月28日〜5月10日 AM10:00~PM6:00 国立新美術館)

image size 91x60cm

多色木版画小品「黒侘助」

数十年前に椿の挿し木をした中に「これは黒椿」と言ってくださったのが2本ありましたが、1本は数年で枯れてしまいました。残った一本は大きくなって毎年深紅の花を咲かせます。「これは永楽という品種の黒椿」だと教わったつもりだったのですが、調べてみると「永楽」という品種は「黒侘助」というようです。ガラスの小瓶に挿したこの花がとても綺麗に見えたので版画にして見ました。最初に作ったのは右側ですが、侘助らしくなかった(少し咲きすぎた)ので、新しい花を挿し直して作った作品が左側です。右の背景は薄墨で、左側の背景はアクアブルーに杉板目をセルリアンブルーで摺利取っています。